top of page

猫の列車

貴方は猫の列車と云うモノを知っておられるだろうか。
毎回決まって満月の日の真夜中に、どこからともなくやってくるそうなのだ。
行き先は、『やまねこ駅』『国立集会所駅』『王ノ城駅』…など。

列車の出る日は猫たちの集会の日。
そんなわけで満月の日には猫が各駅から乗り込んでくるのだ。

或る飼い猫は己を抱えて眠る子供の腕から抜け出し、
又或る山猫はふもとへの登山道をせっせと下って行き、
そして或る野良猫は、ポリバケツの上から重い腰を上げる。
手に手に手土産を持ちながら。

そうして町単位での会議が開かれる。
普段はそうそう好意的じゃない猫たちも、このときばかりは皆やってくる。
それはどこでも同じで、今まで欠席した猫なんぞそうそういないのだ。
強制じゃあないが、ごちそうがタダでたらふく食べられるなんて話、腹を空かせた猫連中。食いつかぬ猫もいないだろう。

普段は皆、町単位でやっているのだが、本当に何年かに一度、世界中の国の猫たちの集会がある。

そりゃあもうすごいモノで、中国猫の団体はみんなして見事な雑技をやっていたり
フィンランドからはサンタクロウスの飼い猫たちがやってくるし、
フランス猫はこっそり酒蔵にしまってあったワインをもってやってくる始末。
もちろん、こればっかりは戦争中だったりして来られない国の猫もいるのだが。
猫の中にも王はちゃんといて、雄牛ぐらいの大きさの、胸に白いぶちのある黒猫がいる。人の姿にもなれる。会議のときにはいつだって出席しているよ。


貴方の家の猫が一週間ほどいなくなってひょっこり帰ってきたのなら、案外会議があったやも知れぬモノだ。

うん?どうしてそんなことを知っているのか?

ああ、それは・・・

bottom of page